「いびき」と睡眠時無呼吸症候群SASとその治療について

睡眠時無呼吸症候群 SAS (サス)とは?

 

睡眠時無呼吸症候群は通称SAS(サス)といいます。睡眠中に呼吸が止まり、それが原因で日常の生活に様々な障害を引き起こす病気です。

ほとんどのSASの患者さまは、呼吸する際に空気の通る道(気道)が、ふさがったり、狭くなることによって起こります(閉塞型睡眠時無呼吸症候群(閉塞型SAS))。

 

「いびき」をよくかく人ご用心

 

「いびき」は、睡眠中に空気の通る道(気道)が狭くなり、その狭い気道に空気が通る時、のどが振動することによって生じる音です。閉塞型SASの特徴は、無呼吸状態の間は「いびき」が止まり、その後、苦しさにあえぐような激しい呼吸や大きな「いびき」で呼吸が再開するのです。

呼吸が停止している間は、からだが酸素欠乏(酸欠)状態になります。そのため、朝目覚めたときに「頭が重い、だるい、疲れている」などといった症状が現れます。

SASの患者さまは、睡眠中に無呼吸状態と呼吸再開を繰り返し、呼吸するたびに脳が覚醒した状態になりますので、睡眠状態がブツ切れになってしまい、深い睡眠がとれず、浅い眠りが続き、夢を見ている状態のレム睡眠が断続的になったりするのです。ですから、たとえ7~8時間といった睡眠時間をとっても、SASが原因で熟睡できず、睡眠不足と同じ状態になってしまうのです。

 

慢性SASの人はどんな症状?

 

起きた時に頭痛や頭重、倦怠感があり、集中力や記憶力が低下します。ですから、日中にもかかわらず、常に眠気があり、このことが交通事故や作業ミスにつながってしまいます。

 

急性SASの人はどんな病気に?

SASは高血圧、糖尿病、心不全といった病気につながります。特に心不全の患者さんの約3040%はSASを合併しているという報告があります。このほかにも、心臓や血管障害、夜間の突然死、脳梗塞、認知症などの原因となってしまうのです。

SASは、からだが酸欠状態になり、少ない酸素を全身に運搬しようとするため、心臓や血管に大きな負担がかかるのです。このような状態が長く続くと、様々な生活習慣病の合併症を引き起こしてしまうのです。

 

SASの検査方法と診断

 

SASが疑われる患者さまは、まず当クリニックでお貸しする携帯型装置を使ってご自宅で簡易検査を行います。これは血中の酸素濃度や呼吸の状態を連続モニターするものです。この簡易検査を一晩行っていただきます。この簡易検査だけでも、睡眠中の無呼吸や低呼吸の頻度が高く、血中の酸素濃度が低くなってしまっている患者さまはSASと診断することがあります。

SASの確定診断は、終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)という方法で行います。PSGは睡眠中の脳波、眼球やあごの筋肉の動き、心電図、鼻に入る空気の流れ、呼吸の状態、酸素飽和度など多くの項目をモニタリングできる検査装置です。

この装置は当クリニックがご紹介する専門施設(諏訪赤十字病院、諏訪中央病院など)で一晩入院して測定していただくのですが、この検査によって、一晩の総睡眠時間中の無呼吸と低呼吸の合計数がわかるため、1時間あたりの睡眠呼吸障害の程度(AHI *1参照)を正確に測ることができます。その他にも検査データから睡眠の質や無呼吸の種類、そのほか睡眠を妨げる症状などを確認します。

 

   SASの重症度は、AHIと呼ばれる無呼吸低呼吸指数で表します。一晩の睡眠を通して、1時間あたりの無呼吸や、低呼吸(呼吸が浅くなる状態)の頻度を測定して診断します。

AHI 5回以上 日中の眠気などの自覚症状がある

AHI 515回 軽症 

AHI 1530回 中等症

AHI 30回以上 重症

 

AHI40を超え、日中の眠気などSAS症状が明らかな場合は、その患者さまは、持続陽圧呼吸療法(CPAPの対象となります。AHI40未満であれば、さらに精密検査(PSG検査)が必要です。

 

持続陽圧呼吸療法 CPAP

持続陽圧呼吸療法(CPAP)は、SAS治療の中心となる治療です。鼻に装着したマスクから送り込んだ空気の圧で空気の通り道を確保する治療です。患者さまに適した空気圧を設定することで、睡眠中に気道ふさがるのを防ぎ、呼吸がスムーズにできるようになります。

CPAP治療を開始する前に、一晩医療機関に入院し、鼻につけるマスクの調整や患者さんの状態に合わせた空気圧の調整などを行うことが多いですが、そのままご自宅で使い始める患者さまもいます。

CPAP治療を行うことで睡眠中の無呼吸や「いびき」が軽減し、しっかりと眠れるようになるため、昼間の眠気や疲労感などの症状が劇的に改善します。CPAPの使い始めはマスクを装着して寝ることに違和感がある方もいますが、毎日装着しているうちに多くの患者さまが装着に慣れ、快適な睡眠を手に入れられます。

 

「いびき」や「SAS」、「寝ても疲れが取れない方」、一度、当クリニックで医師に相談してみてください。